1.損害賠償責任

労働災害の発生で、被災者は損害賠償の請求権を有します。労働災害が企業にとって脅威なのは、民事の争いによって弱者保護・被害者救済に基づき、企業が相当に高額な賠償金を担うケースが起こり得るためです。実際には、賠償金が1億円超に至る例※もあります。  

 

 

※参考

労災民事損害賠償の高額判決・和解額上位20事例の平均額が2009年に1億円を超え、最高額事例は脳過労障害で後遺障害1級、地裁判決の賠償額1億9400万円に対し2億4000万円で和解の事例。(2010年) 

 

 

政府労災(労働災害保険)で補償されない部分

  • 慰謝料(事故に伴う精神的苦痛への慰謝料)
  • 逸失利益(事故後3日間および平均賃金の4割、将来に向かって喪失した労働能力)

 

死亡慰謝料と死亡逸失利益の計算

 

後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の計算

 

 
労災民事損害賠償額が高額化する理由

政府労災から年金の給付が受けられるケースでかつ「前払い一時金※」の給付が受けられる場合、民事賠償額から「前払い一時金※」のみ控除することがありますが、「分割給付の年金部分」は控除されず、非控除説にしたがって最終的な損害賠償額を決定することになります

言い換えれば、政府労災から分割給付される年金部分について、損害賠償請求では前払い利息を控除した一括請求が認められることになります。この”政府労災(給付)と損害賠償(請求)の性質の違い”、が賠償額高額化の最大の理由になっています。

 

※遺族補償年金前払一時金の最高限度額は給付基礎日額の1000日分。

 

 

 

補足

企業の損害賠償より先に政府労災から給付がなされた場合、結果として損害賠償と重複する給付相当額は、企業が政府に返還することになります。(この支給調整を「求償」といいます)
これと逆に、政府労災の給付より先に企業の損害賠償がなされた場合、損害賠償と重複する相当額は、将来に渡って労災保険から給付されません。(この支給調整を「控除」といいます)

 


メンタルヘルス労災
平成10年からの10年間で、うつ、自殺など、精神疾患を原因とする労災の申請件数が約20倍に増加していることから、平成20年3月1日施行の労働契約法では、第5条で労働者の身体等への安全配慮を義務として明文化していますが、厚生労働省発表の平成17年患者調査では受療中の精神疾患患者数が約300万人、未受診患者(かくれ患者)は受療中患者数の約10倍というデータも公表されおり、企業にも具体的対策が求められています。

 

脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況(平成19年度)について(厚生労働省)

 

精神障害に係る労災申請とその認定率(労務安全情報センター/厚生労働省)

 

過労死判例データベース

 


使用者賠償責任補償
労災で企業が民事上の賠償責任を担うとき、契約金額を限度に企業の責任額を支払う、という補償です。

この一見すると合理的な補償は労働災害総合保険の特約として提供されるのが一般的ですが、主契約部分からの給付を補償定義としているものが多く、労災保険の給付が行われないケース(例えば業務中の社有車での交通事故で自賠責保険との分野別調整が発生するケースなど)でメリットを享受できないことがあります。労災事故には第三者行為、精神疾患、既往症の問題などの関連要素が存在することから、保有リスクと補償定義の十分な付き合わせを行う必要があります。

 

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不真正連帯責任
建設業法では、直接工事を請負ったものを「元請負人」、その下請を「下請負人」と定義しています。建設業ではひとつの工事において、複数の元請・下請関係が発生するケースが日常的にあり、例えば、3次下請にあたる一人親方が業務中に死亡、遺族が企業を追訴する場合、元請負人以下すべての業者(この場合は元請、1次下請、2次下請の計3者)に賠償責任を求めることがあり、これを不真正連帯責任による訴求と言います。現実的には元請の企業規模が大きいほど下請業者が取る不真正連帯責任リスクも大きくなると言えます。

 

2.災害補償責任

災害はいつ・どこで・どのような形で訪れるか正確には分かりません。

市場の規模が大きくなるにつれ、労働者が労働によって受ける災害も多様さを増してきました。

そのために労働基準法は、労働者を災害から守るためにさまざまな規定を設け、また、万一の場合は、労働者および家族に対し、一定の補償を行うよう事業主に義務付けています。

(労基法第75~80条:災害補償責任)

 

 

労災保険の概要

労働基準法は、労働者を災害から守るためにさまざまな規定を設け、また、万一の場合は、労働者および家族に対し、一定の補償を行うよう事業主に義務付けています。

しかし、事業主が無資金であったり、また、災害が一時に大量に発生して事業主が補償をしきれないというケースが考えられます。

そのため、国が労働者に対し、直接災害補償をする制度が必要となり労災保険は生まれました。

また、労働基準法上の労働者でない人達の中には、労働者と同じような仕事について業務災害の危険にさらされている人が少なくありません。

例えば、中小事業の事業主、建設業における大工、左官等個人タクシーその他の自営業者、それらの家族従業者や家内労働者です。

これらの人の業務災害については、他の法律によっても十分な保護を受けていないので、これらの人も特別に労災保険に加入することができます。

労災保険は政府管掌の保険事業として、仕事が原因で負傷、病気、身体障害、死亡などの業務災害や、通勤途上生じた負傷、病気身体負傷、死亡などの通勤災害で受けた損失の回復またはてん補を行い、あわせて労働者の福祉に必要なサービスを行うものです。

 

労災保険ポイント20

 

 

政府労災保険の費用徴収

  • 使用者の故意、重大な過失により保険関係成立届の提出を怠っていた。
  • 保険料を納めていない期間中に労働災害が発生した。
  • 使用者の故意・重大な過失により労働災害が発生した。


上記に該当する場合、使用者は保険給付費用の一部(給付額の40%または30%の額)を費用徴収されることになります。これを政府労災保険の費用徴収と言います。費用徴収の対象となった場合でも、災害を被った労働者には保険給付が行われます。

 

対策

社内規程と任意保険

  • 災害補償規程(災害補償給付規程)を備え付ける。
  • 労災発生時の対応手順をあらかじめ明確にしておく。
  • 任意保険の内容確認(実態とのマッチング)、見直しを定期的に実施する。

 


参考

民事責任は金銭で果たすものです。保険で対応できます。

 

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